10-3

「……スノウ。ここはトンタローの村なのか?」
「あ”ぁ”ぁ”ぁ”ー」

 酷い臭いに腕で口を覆いながらイーサンが聞くと、スノウは返事をしているのか唸っているのかどちらとも言えない声を出した。

 スノウがテレポートで行き先を間違うはずがない。
 恐らくここはブラックオークの村だろう。
 だけど、なんでこんなありさまなんだ。

 そんなことを考えていると、少し近くで聞き覚えのある鳴き声がした。

「イ”ィ”ィ”ィ”ー」

 鳴き声のする方を見ると、片腕を失っているブラックオークがこちらに向かってきている。

「なんだ、トンタローじゃない」
 冷たい声でスノウがそういうと、イーサンの体に入り”同期(シンクロ)”した。

 スノウがトンタローと認識したブラックオークはすでにイーサンの知っているトンタローではなかった。

「スノ”ゥ”――」

 殺気と憎悪に満ち溢れてた声でスノウの名を呼び、飛びかかる。

――《過重力(グラビティ)》

 飛びかかったブラックオークのトンタローは、二人に届くことなく地面へと勢いよく飛び落ちた。

 過重力(グラビティ)で地面と張り付いているトンタローが何やら言っている。
「お前たちのせいで……村は……ブラックオーク族が……」

 予想するにあれだろう。
 トンタローが村に誘ったあの日、キューブのアラーム音がなった。
 その音でヒヒたちに居場所がバレてしまったのだ。
 俺とスノウはテレポートで帰ったが、トンタローは村に帰る際に自身の怪我もあり、抜け道を使ったのだ。

 それがヒヒたちにバレて、今に至ると。
 実際にトンタローも村に行けば安全であると言っていた。

 でないと、ブラックオーク族が簡単にヒヒたちに村を攻め落とされるわけがない。

「あんたさぁ~。気を付けて帰れって忠告したわよね?自分で犯したミスが原因なの棚に上げんじゃないわよッ」

「イ”ィ”ィ”ィ”――」
スノウが見透かすようにそういうと、トンタローはさらに鳴き声を上げた。

「だからその鳴き声嫌いなんだって」

 そういうと過重力(グラビティ)を強め、トンタローの体は原型が失われた。

「あ”ぁ~萎えるわ、ほんと。来たくもない豚共の村に来たっていうのに、この馬鹿のせいで壊滅……。かと言ってヒヒたちなんかどうでもいいし~」

 スノウは自分の獲物(ブラックオーク)が先に取られたことはどうでもいいようだった。
 それよりも『ここに来た勢い』が行き場を失い、モヤモヤしているようだ。

(豚共を生き返らせて、ヒヒたちを驚かせる……違う。ヒヒたちに喧嘩を売りに行く……違うわね。蝦蟇(がま)たちをけしかけてヒヒたちにあてる……そもそも蝦蟇はそんな性分じゃないわね――)

 「あっ!」

 スノウが何かを思い付いたようだ。
 すると”タイムリープ”と唱えた。

 着いた先は、アラームが鳴って俺たちが帰ったすぐ後だった。
 目の前にはトンタローが立っていた。

 

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