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「敵襲ッー!敵襲ッー!」

 何処からともなく、ブラックオークの鳴き声と共に敵襲を知らせる声が聞こえて来た。

「――西の方からです」
 トンタローが耳を尖らせ言った。

「スノウ様たちはここでお帰り下さいッ!」
 トンタローはそう言うと、四足になって耳を澄ました方へ走って行った。

「はぁ〜、あの馬鹿……ほんと世話がかかる」
 スノウが独り言でそういっていたのが聞こえた。

「私たちも行くわよ」
 スノウはそう言うとイーサンの体に入り同期(シンクロ)した。

《“跳躍“》

 イーサンたちもトンタローの向かった方へと、『ドンッ!』と地面を蹴る音を鳴らしなが飛んで向かった。
 地面には深く踏み込んだ跡が残っていた。

 飛んでいる最中、ブラックオークとヒヒが交戦している様子が目に入った。

 (居たわ!)
 スノウの声が聞こえると、トンタローがヒヒ達の中でも二回り以上大きいヒヒに突進する気なのか、地面を蹄(ひづめ)で掻いている。

 その大きなヒヒは突進を受け止める気なのか、身構えている。

 トンタローが大きな鳴き声あげて突進する。
 ヒヒに近づいた時、トンタローはさらに大きな鳴き声と共に牙を振り上げた。

「イ”ィ”ィ”ィ”ー!」
「ン″ッッッ!」

 ヒヒが力んだ声が聞こえた。
 大きなヒヒは両腕でトンタローの二本の牙をガッチリと掴んでいた。

 トンタローはヒヒを振り払おうとしている様子だったが、ビクともしない。
 すると、大きなヒヒは牙を掴んだままトンタローを振り上げ、勢いよく地面へと叩きつけた。
 トンタローはその後も、何度叩きつけられただろうか。

「降……参しま……す」
 ボロボロになったトンタローがそう言った。

 しかし、大きなヒヒがそれを受け入れるわけがない。
「許すわけねーじゃんッ!」
 笑いながらそう言うと、他のヒヒ達に面白いものを見せてやると言った。

 ヒヒ達とブラックオークたちの視線が集まる中、

「“クラッシュ“」

 そう言うと、掴んでいたトンタローの二本の牙は粉々になった。

 それをみていた他のブラックオーク達は戦意を失った。
 中には膝から崩れ落ちるものもいた。
 それもそうだ、ブラックオークにとって牙は一族の象徴であり、誇りを持つほどの硬度があった。

 村の歌にも『猪突猛進 歩みを折られど、その牙折れず』の一節があるほどだ。

(勝負ついたわね)
 スノウがそう言うと、スノウ主体でトンタローの近くまで飛んだ。
 
 スノウは体から出てくると手をパチパチ鳴らしながら言った。
「はい、はい、はい〜!ブラックオークvsシロヒヒの勝負はシロヒヒの勝ち〜みんな散った、散った〜」

 場を仕切るかのように言うが、ヒヒ達が言う事を聞くわけがなかった。
 突然の仕切りたがりにヒヒ達が笑う。

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