ヒヒ達が突然の仕切りたがりに笑う中、一匹のヒヒだけが笑わずにスノウを見つめていた。
そう、先ほどトンタローの牙を粉々にした大きなヒヒだ。
するとそのヒヒは突然、他のヒヒ達に向けてこう言い放った。
「じゃかわしいわいッ‼︎」
笑っていたヒヒたちは、自分たちに向けられた殺気混じりの一言に尻尾を巻いた。
スノウは「へぇ」と感心した様子で大きなヒヒへと視線をやった、その時だった。
「お前ッ!ワシの妻になれッ!」
大きなヒヒはスノウの小さな手を、器用に優しく親指と人差し指で摘みそう言った。
(わかってねぇ――)
スノウの感心は一気に冷めた。
一番大きなヒヒがそんな調子な事もあり、他のヒヒたちはどうする事も出来ずに、お互いに目を合わせたりするだけだった。
「放しなさいッ!そもそも、何でこの私がシロヒヒのボスの妻になんかならないといけないのよッ」
シロヒヒのボスと言われたヒヒが、弾かれた手を痛くもないのにスリスリしながら話した。
「この群れを見てみろよ。叡智(えいち)のシロヒヒとも呼ばれた一族は誰かの号令無しには動けない能無しばかり……。出来ることと言えば、他種族を馬鹿にする事ぐらい。――だからこそッ、お前みたいなのが必要なんだよッ!」
確かにヒヒたちは依然として自ら何かをする様子はない。
そんな中、トンタローの隣で存在すら忘れられていたイーサンが小さな声でぼそぼそ言っている。
「なんか違う……なんか違う……なんか違う……」
そして、ついに限界を迎えたのか。
「ちっっっがーう!!」
イーサンの叫びはやまびことなった。
イーサンはもっと違う展開を予想していたのだろう。
例えば……そう、こんな感じである。
『逃げ惑うブラックオークたち……虐殺をするシロヒヒ、そんなシロヒヒを率いるボスとの熱戦!止めに入るシロヒヒの長老、明かされるスノウの過去とこの島の秘密――』
だが、現実は――求愛を続けるシロヒヒのボス、戦意を失った豚と能無しの猿。
どうしようもないやつばっかだ。
それに蝦蟇(がま)はいつになったら出てくるんだ?冬眠でもしてんのか、こんなくそ暑いのに?
「ン、ンッ。スノウ集合ッ!」
イーサンがそういうとスノウは同期(シンクロ)した。
「”絶望のオーラ”」
そういうと、戦意を失った豚と能無しの猿はもちろん、シロヒヒのボスもイーサンたちにひれ伏した。
そして――
「今後の方針を話し合います!」
とだけ言った。
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