イーサンが意識を失って少し時間が経ったころ。
「確か、あの辺りじゃないか?」
「気を付けろよ!どんな奴がいるかわかったもんじゃない」
と腰に警棒を携えた男二人がイーサンの方へと向かってきていた。
スノウは既にイーサンとの統合(フュージョン)を解除しており、
「さっさと起きろ!このスキルなし!」
とイーサンの顔をベシベシと叩いていた。
もちろん、スノウは男二人がこちらに向かい始めたころから気づいていた。
一人の男が倒れているイーサンに気づく。警戒心を強めて、もう一人に片肘で合図した。
その様子が見えていたスノウは
「気絶するあんたが悪いんだからね!」
と言いながらイーサンの顔に軽い蹴りを入れ、”幽体(アストラルボディ)”と唱え姿をみえなくした。
恐る恐る、男二人がイーサンに近づき様子を確認する。
「気絶してるのか?」
「あぁ、どうやらそのようだ。魔力切れでも起こしたんだろう」
そういうと一人が”遠隔通信(コール)”と唱え、状況説明をし始めた。
「こちら先導隊。容疑者らしき男一名を発見。場所はB-19湖畔。」
そういうと、「了解」との返事とともに同じ格好をした男女がテレポートでやってきた。
「この男です」と発見した男がいうと、
「よくやった。周囲の警戒に回ってくれ」とテレポートでやってきた男が二人の男に指示を出した。
指示を出した男は、ふいにスノウのいる方へと目をやる。
(害を加える気はないようだね)
そう胸の内で言うと、イーサンに向けて”目覚めろ”と唱える。するとイーサンは目を覚ました。
その様子を少し離れていたところから見ていたスノウは
(マジで?こっち見てたわよね?それに…あんなスキル初めて見るわよ。一体、あいつ何者なの?)
そう思っていた。
目を覚ましたイーサンは少しぼーっとしていた。
そんなイーサンに男は話しかける。
「君はどうしてここに居るんだい?ここがどういう場所か分かってるかい?」
あくまでも優しい口調でそういった。
ぼーっとしていたイーサンは状況を理解したのか、目を強くパチリとすると起き上がり
「ここへは気になっていた子が、既婚者だったことにショックを受けてきました!
どういう場所かは知りません。自分が何かご迷惑をかけてしまったなら謝ります!
すみませんでした!」
そう嘘と本当のことを言って深々と頭を下げた。
「でもねー。ここに来るまでにあれは見なかった?」と男は看板を指さした。
そこには
『湖に向けた攻撃スキル使用禁止』
そう書かれていた。
イーサンは言葉を失う。
「拘束しますか?」
テレポートで一緒にやってきた若い女性が男に聞く。
今にもスキルを使いたくてウズウズしているようにも見える。
まあまあと男は女をなだめながら、「一応決まりだから…」と言い、イーサンに向けて”鑑定”と唱えた。
男はステータスを見始める。
しかし、この容疑者に攻撃系スキルはおろか、何一つスキルはない。
「もう(拘束しても)いいですよね!」と女が”拘…”と唱えようとした瞬間、
「帰るよ」
男はそう言った。
女は予期せぬことにスキルを誤唱し、彼女は黄色く光るロープのようなものでグルグル巻きにされてしまった。
「全く君は…」と頭を抱えながら、男は荷物の入った買い物袋でも手にするように拘束の紐を掴んだ。
男は帰り際にイーサンにあらぬ疑いをかけてしまったことを詫びた。
そして一言、ここには不用意に来ない方が良いことを告げ、テレポートで帰っていった。
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