まだ名もないそのスキル#17「折角だしそれっぽいことでも言いましょうか!」

「ニグルドォー!!」
 イーサンはニグルドの名前を叫んだ。それと同時に体は無意識にニグルドと大猿の魔獣の方へと駆け寄っていた。

 声に気づいて、ニグルドと大猿の魔獣がイーサンの方へと顔を向ける。

「なんだ、イーサンじゃないか」
 大猿の魔獣が笑みを不敵に浮かべてイーサンの名を呼んだ。

 「……えっ?」
 さっきまでの勢いはその声を聴いて失われた。聞き覚えのある声。
 大猿の魔獣の声はミーゼルのものだった。

「お前、ミーゼルなのか?」
「お前呼びとは失礼だぞ。……まあいい、今は気分が良い」

 大猿の魔獣がにやけた顔で笑いながらそういうと、空いていた右腕でニグルドの顔を殴りつけた。

 「一体、何が起きてんだ?」
 立ちすくむイーサンを尻目に、大猿の魔獣もといミーゼルのリンチは続く。

 「悪趣味ね」
 遅れてやってきたスノウがそういうと、大猿の魔獣は殴るのを止めた。
 どうやら大猿の魔獣の気に障ったのだろう。スノウの方を睨みつけるように見た。

「プッ!ハハハハハハッ!」
 大猿の魔獣はスノウを見ると、急に笑い出した。

「俺様にいちゃもんをつける奴がどんなやつかと思えば、不純物(ノロ)じゃないか。これは傑作!今回は見逃してやる、さっさと失せろ」

 スノウへの関心を失った大猿の魔獣が再び、ニグルドを殴ろうと拳を振りかぶった時
「なんで!なんで、あんたはニグルドを目の敵にするんだ!ニグルドはあんたの部下としては優秀だったはずだ!」
 イーサンにはニグルドがミーゼルからそんな仕打ちをされる謂れがないことを誰よりも知っていた。

 だが、大猿の魔獣になったミーゼルは
「うっざ」
 吐き捨てるように言って、イーサンを蹴り飛ばした。

 壁にぶつかり、視界がぼやけてくる。ミーゼルがリンチを再開したようだ。
「……クソが。やっぱりあんたはクソだよ」
 だが、イーサンの声は聞き取れないほど小さくて、ミーゼルには届かない。イーサンはそのまま意識を失ってしまった。

(あー、よっわ。ほんと弱いわ。これだからスキルなしは)
 スノウの声が聞こえる。
(にしても、猿の分際でこの私を不純物(ノロ)扱いするとはいい度胸ね……)
 どうやら、スノウはイライラしているようだ。
(ちょっと、あんた聞こえてんでしょ?!体貸しなさいっ!)
 体貸せって?俺の体を貸したところであんなの倒せんのかよ?
(私を誰だと思ってんのよ!魔人よ!それも2099年もかけて、力をつけてきた大魔人よ!)
 そういえば、前にそんなこと言ってたっけ。大魔人にしてはちっちぇけどな。
(それ、体のサイズのことよね?そうよね?そうよね?じゃないと三回殺すわよ)
 お前、俺のこと殺せないじゃん(笑)。いいよ。あとは任せる。
(ほんと、あんたって腹立つわね!……決めた!あんたのことは十回殺す!十回だかんねー!)
 はいはい。
(『はい』は一回っ!)
 はーい。
(伸ばすなー!)
 それで俺はどうすればいいんだ?
(どうするもこうするもないんだけどねー。まあ、折角だしそれっぽいことでも言いましょうか!……せーのっ!)

《解ッ!》

 目を覚ますと左目だけに変化が起きていた。
 その瞳は見ただけでも凍えるような、青白さだった。

 



 


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