ミーゼルの姿が消えてから一週間のあいだ、商会内ではミーゼルに関する話があちらこちらでされていた。
話の中身は横領していただの、パワハラしていただの、従業員たちに詐欺のあっせんをしていただの……。良い話は一つも聞くことは無く、姿を急に見せなくするには十分なほどの内容ばかりだった。
また、ミーゼルと同等の立場にあった責任者も遠方から遥々やってきて、ミーゼルの身辺調査をしているようだった。
結果的にミーゼルは商会から解雇されたのだが、その理由は伏せられていた。
ミーゼルが商会内で一種のトレンドになっているとき、イーサンはゴシップネタにしたらこんなタイトルだろうなと、ふと思っていた。
『余罪多数!「○○商会の責任者XXX」の生い立ちは?魔獣化して逃亡』
それと同時に
(どうせ、いち商会の人間程度の話なんかを世間が大注目するわけはないな)
とも思っていたが、ゴシップの物書きから足を洗ったイーサンには商会内での噂話すらどうでもよかった。
家のソファーでくつろいでいると、ふと大猿の魔獣との闘いが思い出された。
(そういえばなんで……、もっと早くに不意打ちで倒さなかったんだ?)
そんなことを思っているとスノウが体から出てきて言った。
「そんなの決まってんじゃない。あの大猿をボッコボコにしたかったからでしょ! まあそれにしても、あんたも意外とサイコパスよね~」
心当たりがないわけではなかった。
「あいつから”洗脳”使われるまでは楽しそうな顔してたもんね。魔獣とはいえ、多少の恩義を感じている相手に対してあんな楽しそうな顔して殴れるんですもの」
言い返す言葉もなかった。今でもあの高揚感が思い出せる。それと同時にまた味わいたいとすら感じている。
「他にすることないわけだし、……ギルド?冒険者ギルドにでも登録して魔獣狩りでもしてみたら~」
そういうと、スノウはベッドの方へゆらゆらと飛んでいって寝た。
(俺は……単なるサイコパス野郎なのか? どうなんだろう……?確かめてみる必要があるな)
冒険者ギルドに登録しに行くことを決め、その日は寝ることにした。
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