スノウと同期(シンクロ)すると目の前の草木が透けて見え、五体の熱源体がこちらに向かってくるのがわかった。
(スノウにはこういう風に見ることもできるのか……)
そう感心している間にも戦闘準備のスキルが次々と使われる。
《”身体強化”、”暑さ無効化”、”防虫”、あとは”消臭”》
(消臭?今、消臭って言ったよな?暑さ無効化はこの気温と湿度でわかる。防虫も虫が多いからわかる。でも消臭って……)
(あんた汗くさかったわよ)
それはそうだ。商会の仕事終わりにそのままギルドに行って、それからこのクソ暑い場所に連れて来られたんだ。
(俺は悪くないッ!)
そう思いながら、拳をギュッと握った。
また、辺りはジャングルに不釣り合いな石鹸の良い香りがしていた。
次にすることはトンタローの安全確保だ。
ブラックオークのトンタローを掴むと、荷物でも所定の場所にしまうかのようにポイっと安全な場所に投げた。
気を失ってはいるものの、地面に着いた際には『ゔっ』という低い声が聞こえた気がした。
すぐさまトンタローを背で隠す距離にジャンプして移動する。
(よしっ!準備はこのぐらいね!いつでもかかってらっしゃい!)
(結局近くに移動するなら、投げる意味はあったのだろうか?)
そんなことを考えていると、トンタローの追手が目視できる距離に現れた。白いヒヒが均等な距離感で半円状に囲んで、こちらの出方を木の上から伺っているようだった。
すると、正面の一体が口を開いた。
「ウキッ!キィッ、キキィ!」
どうやらそいつをよこせと言っているぽい。
(下っ端風情が上から物を言うんじゃないわよ)
スノウの癇に障ることも言っていたのだろう。
《過重力(グラビティ)》
そう唱えると、木の上にいた白いヒヒたちは木から勢いよく落ちた。
過重力(グラビティ)の効果は続いており、地面にめり込んでいる。
その様子を見てスノウが
(猿も木から落ちるってこういうことよねッ!)
得意そうに言ってきたが
(多分違う)
冷静にそう返した。
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