まだ名もないそのスキル#27「スノウ様」

(で?この猿どもどうすんの?)
 とりあえずと、白いヒヒたちを過重力(グラビティ)で木の上から落とし、地面で拘束状態にしたわけだが……

 スノウはもちろんの事ながら、イーサンも次の展開を考えていなかった。
(とりあえず……殺す?冒険者だし?)
 イーサンがスノウに選択権を与えるような質問をする。

(なによそれ? そうね~それもありだけど、一匹は解放して残りは足止めのためにそのままにして置くってのはどうかしら?全部殺したら、消えたヒヒたちを探しにジャングル中で捜索が始まるかもしれないし……。ってか、やっぱあんたサイコパスでしょ!なによ『とりあえず……殺す?冒険者だし?』って)
 スノウの笑い声が頭の中で響き渡る。

 これにはイーサンも言い返すことはできなかった。
 そして、話し合った結果、五匹のうち一番弱そうな一匹をボコボコにして解放することにした。

 解放後、スノウになんで一番弱そうなやつをボコボコにしたのか聞いたら
(これがヒヒを一番怒らせる方法だから)
 そう言っていたが
(うん、一番ダメな方法じゃん)
 イーサンはスノウに選択権を与え、提案を丸のみしたことを後悔した。

 そんなことを思っていると、ブラックオークのトンタローが目を覚まして後ろに立っていることに気づいた。

《あっ!》

 目が合うと、トンタローは慌てて片膝をついてお辞儀した。
「スノウ様、お久しぶりでございます。このトンタロー、姿は違えどスノウ様を見誤ることはございません」

 するとスノウは体から出てきて、トンタローの肩に乗り
「苦しゅうないぞ、トンタロー。良きに計らえ」
 そう言って、カカカッと高笑いをした。

「ありがたきお言葉、感謝いたします!ところでスノウ様、この人間は何者なのです?今、この者の体から出てきたようですが……」
 トンタローは今にもイーサンを食い殺しそうな様子で見ている。
 スノウはトンタローの殺気を感じたのか『実はな――』と、耳元で話し始めた。

 一通り、話が終わるとトンタローはイーサンの前で片膝をついて謝罪した。
「先ほどの無礼、お許しください!どうかこの通りです」

 トンタローは多くを語らなかったが、さきほどまでの殺気は消えていた。
 それを感じてイーサンもトンタローに言葉を返す。
「いえいえ、気にしてませんので。それよりも、ここに長時間いるのは危ないのでは?どこか安全な場所に移動しましょう」

 そういうとトンタローは
「では、我がブラックオークの村に行きましょう!そこでしたら、ヒヒの奴らも簡単に手出しができないはずです」
 村に行くことを提案してきた。

 イーサンは(村?魔獣の?)と思ったが、スノウはやけに乗り気だった。
「それは良いわね!昔来たときは村なんかなかったわよね~、これが時の流れというものなのかしらねー」
 そんなことを言うスノウが少しばばくさく感じたイーサンであった。

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